日本では「墓地不足」という言葉が躍って久しいですが、(実際はそんなことはありません。詳しくは後日)パリでも、「墓地不足」が葬送においてキーワードになっているようです。

 

フランスも火葬率が上昇

 

フランスはキリスト教でもカトリックの国で、かつては火葬はあまり行われていませんでした。しかし1963年に教会が火葬を認めてからは、火葬が広く行わえるようになります。

1975年の火葬率はわずか0.4%でしたが、近年の火葬率は約30%、都市部では50%以上と言われるほど、火葬率が高まっています。近年は「火葬をしないと浄化できない」と思う人もいるといわれています。

AFP通信(2018年12月12日)によりますと、

パリ市内には墓地が14か所しかない上、おしゃれなモンパルナス地区の木々に囲まれた墓地も、モンマルトル地区のサクレクール寺院に隣接する高架下の墓地も、ほぼ満員状態となっている。

富豪か有名人でもない限り、パリ近郊に墓を確保できる見込みはほぼないだろう。

昨年、パリの墓地の募集数がわずか171件だったのに対し、応募数は約5000件に上った。1区画当たりの価格は、約1万6000ユーロ(約205万円)だった。

とのことです。

ちなみに東京都が事業主体である都立霊園の場合、立地の良い青山墓地だと、1区画400万円くらいから1000万円くらいで、都営といっても割安感はまったくありません。

ちなみに都立霊園の募集数(2018年・平成30年)は、以下のとおり。

<一般埋蔵施設・芝生埋蔵施設(一般的な墓地)>

募集数:1,110区画 受付数:5,064

<立体埋蔵施設>

募集数:70区画 受付数:544

<長期収蔵施設>

募集数:40 受付数:1,046

<合葬埋蔵施設>

募集数:2200体(柱) 受付数:8093体(柱)

<樹林型合葬埋蔵施設>

募集数:1600体(柱) 受付数:12640体(柱)

<樹木型合葬埋蔵施設>

募集数:300体(柱) 受付数:458体(柱)

 

立ち退きを前提とした「占有権」が墓地に

 

AFP通信の中で、ちょっと気になった一文がありました。

パリ市当局は墓地不足対策の一環として、一定の年数経過後の立ち退きを前提とした「占有権」の利用を進めている。

 

パリでは、これまでも10年、30年、50年など期限付きの墓地はあったので、この「占有権」の内容は、もう少し調べてみないとわかりません。何がどのように違うのでしょうか?

 

なお、日本でも、墓地使用期間を一定期間に定め、使用期間を過ぎると改葬して合同墓に納めるケースが増えてきています。通称「期限付き墓地」ともいわれていわれているタイプのお墓ですが、日本の場合は「墓地不足」から生じているのではなく、承継者不在から「継ぐ人がいなくてもお墓は持ちたい」というニーズがあるためにうまれたもの。このような「期限付き墓地」の中には、墓石そのものも新しくせず、次の人が使えるようにする「レンタル墓」システムをとっている墓地もあります。

 

フランスの葬儀事情、お墓事情、火葬事情については下記でも詳しく紹介されています。

「オヴニー」フランスの情報誌

フランスの仕組みと墓地事情(執:京都大学大学院総合生存学館教授 大石眞)