旅立ち前の「撥遣(はっけん)法要」

 

パリで開催される仏像展に向けて、運ばれる仏像の「撥遣(はっけん)法要」が奈良の興福寺で2019年1月5日、奈良の興福寺で営まれたそうです。

 

”奈良市の興福寺で5日、パリのギメ東洋美術館で1~3月に県などが開催する仏像展に向け、現地へ輸送する仏像3体の魂を抜く「撥遣法要(はっけんほうよう)」が営まれた。

仏像展で展示されるのは、木造金剛力士立像2体(いずれも国宝、鎌倉時代)と木造地蔵菩薩立像(重要文化財、平安時代)の計3体で、いずれも海外での展示は初めて。

木造地蔵菩薩立像の法要が寺の仮講堂で営まれ、多川俊映貫首(かんす)ら僧侶が読経し、紙製のハスの花びらをまく「散華」をするなどした。多川貫首は「仏教の精神性や美が、フランスの人たちにどう受け止めていただけるか興味深い」と話した。

仏像は近く輸送され、魂を戻す開眼法要が現地で営まれる。”

引用:読売新聞(2019年1月6日)

 

奈良県では、外国人観光客が熱心に有名寺院で仏像を鑑賞する姿に着目し、県が主導で仏像を海外で展示するプロジェクトをはじめました。今回の仏像派遣はそのスタート。興福寺といえば、国宝・阿修羅像が有名ですが、今回は興福寺で留守番のようです。

 

ところで「「撥遣法要(はっけんほうよう)」法要って何?

 

撥遣法要という言葉は一般にあまり馴染みのない言葉かと思います。浄土宗のホームページには次のように紹介されています。

 

撥遣式(はっけんしき)について

彫刻・図画した仏・菩薩像、曼陀羅、位牌、お墓、石塔などの手を合わせて拝むものを修復しようとした時、繰り出し位牌にまとめるために処分する時、また引っ越しなどで動かす時などに魂を抜く法会です。

これを一般的に魂抜き、お性根抜きを、正式には “撥遣” (はっけん) といいます。

引用:浄土宗

たとえば、これまでお参りしていた先祖代々のお墓を墓じまいする時など、「魂抜き」をして遺骨を取り出したりします(※宗旨・宗派による)。これを「抜魂法要(供養)」「閉眼法要(供養)」等言われることがありますが、これが撥遣法要にあたるわけです。

今回はパリまで仏像を動かすので、一旦魂抜きをして、現地で「開眼法要(供養)」つまり魂入れをすることになります。

 

供養,法要,魂抜き,法隆寺「魂を入れる」言われる「魂を抜く」というと、人によっては違和感を感じる人もいるかもしれません。

ただ旅立つ前の出発式のようなイメージでとらえてみてはいかがでしょう。たとえばスポーツの大会などで選手が出発するときには壮行式が行われるように、見送る準備をするひとつのセレモニーとして考えれば、さほど違和感がないのではないでしょうか。

「有効の架け橋として無事にお役目を……」そんな願いが仏像に込められているのかもしれません。